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 | 第二回 Kozo Inada [稲田光造] Artist's Essayには,サウンドだけでは知り得ないartist達の様々な考えを掲 載していきます。アーティストエッセイ第2回は、「究極のヘッドミュージック」というべき作品を次々とリリースし非主流音楽の中で、"Kozo Inada"という1ジャンルを築いてしまったような趣さえあるアーティスト・プログラマーの稲田光造氏に執筆していただきました。これまでの
作品を貫く彼のコンセプト、サウンドの独自性を読み解く大きなヒントを与えてくれる大変興味深い文章です。 |
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この文章ではコンセプトから音に変わるまでのプロセスについて記述したいと思います。その事で普段音を聞くために経験から完成されてしまっている方法に何か変化を加えればと考えています。
私の音の表現は毎回同じプロセスにより作成されています。大きくわけますと3つのパートにわかれます。「コンセプト」、「表現」、「音への変換」です。プロセス順に文章の方を記述させていただきますが、それぞれのプロセスについて記載内容の具体性も変わりますので、まず音を聞いていただき「音への変換」部分から逆に読んでいただく方が理解しやすいかもしれません。
コンセプト
まず「コンセプト」についてですが、リリース作品としてのa[]-z[]のシリーズおよび-[]シリーズでの「コンセプト」にあたる部分はすべて同じです。完成品としてリリースされている作品のうち、それぞれの違いはその他のプロセスにより変化している事になります。私は「コンセプト」というものは具体的な形になる手前のものと捉えています。よりまして単語に表せる、抽象的コンセプト等については表現方法だと考えます。形を成さない部分が「コンセプト」になります。このコンセプトの部分を説明することが一番難しく感じています。私の頭の中で状態として留まっているものという表現が一番正しいと思います。下記にその「コンセプト」に気づくための工程として文章により表現したものがございますので、ご参照ください。text[0]として2001.3から2001.5までに書いた文章を転載します。長文になりますのでプロセスの話を続けてお読みになる方は次の「表現」の部分へとお進みください。
参照 text[0]
表現
「表現」についてですが、私の場合は「コンセプト」の状態へとシフトさせるための方法と定義しています。自分の現在の状態をその状態へと移動させることが目的になります。いわば、感情等の精神状態をタイムライン上で徐々に運んでいくという作業です。具体的にそのプロセスを説明しますと、まずタイムライン上にそのピーク値となる地点を考えます。最近の傾向として最後の部分にその地点を持ってくるときが多数です。例えば20分を全体として考えたときに最後の点をピークとすると、その地点を最大点としてその状態に持っていくための地点を次の点として記入します。この工程を繰り返しその点を線で結びます。このことにより推移を波で表すことができます。これは起承転結に近い形である場合もありますし、それ以外の時もあります。設計でいうとジェットコースターのコース設計に近いかもしれません。ジェットコースターでは目的は恐怖感を与えるという事で、そのためにより効果的な流れを考える作業が主だと思います。それはやみくもに速いスピードを出せばよいというわけでもなく、まずゆっくり上がっていき、はじめは下が見えない状態を保ち、頂点に来たときに高いと認識させそこから急降下することによりより恐怖感を感じさせるというような方法がこの場合の設計だと考えます。私の表現もこのような方法論に近いと思います。次にその波にあわせて抽象的な言葉を選んでいきます。私の場合はこの作業は辞書を使用することが多いです。形容詞、名詞、副詞などを辞書からピックアップしていきそれぞれの波にはめていきます。この時点では抽象的な言葉のみをピックアップしていきます。そして次にその抽象的な言葉に対する具体性を持った言葉を連想して書き出します。その言葉を表すものを具体音として選びます。そしてそれに加えて音の表現法として音響心理等の事柄を加えていきます。これらの事について実際に使用している具体例を挙げますと、以前大阪市が主催した「響」というイベントでパフォーマンスをさせていただいた時には、リスナーが会場にはいる前から超低周波を会場内に流すという方法をとりました。これは映画館では映画が始まる前にその開始の合図としてブザーがなります。この事は経験として無意識に蓄積されておりそこからはじまるという状態へとシフトさせる役目も果たしています。このような役割として、まずフォーマットの状態を客いれの時から作り上げ、始まる前にそのフォーマット事態を変化させるという試みを行いました。実際、この超低周波は音が出ているときは全く気づかないのですが止まった瞬間に何かが変化したと感じ取ることができる音です。このことを行うことにより空気の張りを変えます。緊張感を持たせることができます。その状態に持っていくと比較的受け入れ態勢が整っている状態となります。この時ははじめに同質の原理として私がよく使う15.75Khzの音を徐々にフェードインしていきました。この音はテレビの走査線が走る時に流れる音で、よく隣の部屋のテレビの音がついているかどうかが感じることができる人がいますが、実際にはこのサイン波に近い音がテレビから流れています。この音はテレビ世代の私からは生活を表す音となります。そしてそこから次にまずリラックスする状態へと持っていくために生活音を小さく聞こえるように流し、車が走る音をわからないように流します。この車の音というのは生活の中で活発さを感じることが多い音です。車の流れが多く遅いスピードだと活発な昼を感じ、少なくスピードが速い状態だと夜を感じるという現象になります。これは一例ですがこのような形で音の設計図を完成させていきます。私のなかでの表現は「コンセプト」となる状態へ持っていくための設計となります。ただし作品に対してこの設計図を見せることはなるべく行わないようにしています。それは人の感性がそれぞれ違うからです。例えば私が蚊の音を使用して不快さを感じさせようとしたと思います。しかし最終的に完成された音から聞く人によってはその蚊の移動の音からスピードを感じたとしましょう。その時にそれ自体私の意図する状態ではないということを提示してしまうことでそれぞれの受け止め方を強制してしまうことはあまり好ましくないからです。また音の使い方においてもやはり私が聞いてきた音の経験に頼り選択をするしかなくなってしまいます。これは当然の事で、作り手が私である限りはこの表現の部分は完全に私のための音となってしまいます。しかし私はそのことについて嘆いているのではなく、それぞれのリスナーの方は私が作成する作品を自由に使用していただくことがよいと考えています。しかし、その中でもできるだけ共通する表現を使用する試みは行っています。心理的な効果といえども、やはり最終は統計により決定するしかありません。私が音を使用して行おうと考えていることは状態の変化を作り上げるためのツールの製作という事にあるため、私が自分で嫌だと感じる音も積極的に使用しています。音を効果的に使用するために本来の音の聞き方としてその瞬間に良い音があるから聞きつづけるという方法ではなく、全体としての流れを感じていただけるとより良いかもしれません。
音への変換
最後に「音への変換」についてです。すでに表現の部分で音のための設計図は完成されていますので、あとは具体的な音を作成するだけの作業になります。現在、私が使用しているシステムはMAX/MSPとNUENDの組み合わせです。具体的な音の作成はすべてMAX/MSPにより作成しています。以前仕事で効果音を作成していた時はコンピュータを使用せず、ADAT, Digital Synthesizer, Effecter, Samplerといった機材により音の製作を行っていました。減算合成方式、加減合成方式、FM音源方式のシンセサイザーを使用して音の破片を作り、それら対してエフェクト処理を行いマルチトラックに並べて作成するプロセスをとっていました。しかしそのプロセス自体が視覚情報が無い状態で行わなくてはならず作成自体に時間がかかることもあり、ProToolsのシステムを使用するようになりました。実際はトラックに並べた音に対して、フィルタリング、エフェクト処理により音を作成するという方法を行っていたため基本的な変化はコンピュータ上に移動したという物理的な事柄のみでした。基本的に音楽を作成するためのツールという理念が強いため、例えばリバーブを10個直列させたりするためにはプラグインをC++により作成する必要がありました。コンテンツの製作時に表現者が技術に力を入れすぎるとその範囲内で考えを行ってしまうという事態によく陥ります。私は基本的に技術者と表現者は別にいてそれぞれの力が出せる部分を協力してこそはじめて表現が完成すると考えていますので表現者がプラグインの作成まで作業を行うとなると表現部分への興味が薄れるという点に懸念を感じました。MSPを使用してからはそれまで考えていた事が一掃されました。シンセサイザーで音を作成するとしたときプリセットを使用すれば音は簡単にでき表現部分に時間を割くことができますが、用意されている範囲でしか表現ができません。また逆にそれを嫌い新しいハードウェアの設計から行えばそれだけで時間がなくなってしまいます。その調度間の役割を果たすためにMSPは大変役に立っています。現在では例えばポップソングを5分づつに分割し、それを少しずつずらして何百回も重ね合わせるといったハードウェアでは考えられない作業が簡単に行えるようになりました。現在パフォーマンスを行うときにはこのように作成されたパッチを使用し演奏を行っています。シンセサイザーやサンプラーによる演奏だとどうしても手でできる範囲でしか操作ができないのですが、MSPを使用して自分が行うひとまとまりの動作をオブジェクト化することにより操作できる範囲が増えます。操作のためには自作のMIDIコントローラを使用しています。このコントローラはPICというマイコンにプログラムを焼き付けてボタン操作によりMIDIメッセージが出るようになっており、そのメッセージをMSPで受け取りリアルタイムに加工していくという方法をとっています。また最近ではあまり必要性がなくなってきているので使用していませんがセンサーからの情報をMIDIに変換するiCubeという機材を使用して、自作のセンサーを使用し音を動かすことでよりリアルタイムでの同時操作の限界を補っています。MSPの苦手なタイムラインベースの作業にはNuendを使用しています。パフォーマンスのセッティングでも基本的なタイムラインにはPCによるNuendの操作で行い、音素材はMSPにより行うという方法をとっています。現在、「音への変換」は表現のプロセスで記述された音を忠実にMSPにより作成し、Nuendによる配置により完成させるというプロセスを踏んでいます。具体的に現在の音の製作システムを述べましたが、もし私が絵画等の技術に長けていればこの部分を絵で表現していたかもしれません。しかし絵ではタイムラインがないと言う所にすこし惹かれる所がありませんが。映像では全く同じ事を表現できると考えています。私が音を使っているのはただ自分の中でもっとも形として表現する方法として音が容易だったためです。極端な話、例えば砂だけを使用してその分布図により表現するといった表現法でもよいわけです。このプロセスは単なる変換ということが主体になります。
以上音の製作プロセスについて記述させていただきましたが、基本的に表現者が表現方法を説明するということはその捕らえ方を歪めてしまう恐れがあるため、あまり好ましいことではないと考えていますが、音楽という美しさ、楽しみという根本的原理に基づいたものとは少し違う別の方向を根本概念として製作しているということを理解していただければ幸いです。また、それぞれの方が目的にあわせて私の作品を利用していただければよいと考えております。
Kozo Inada, Feb 2003
リリース作品
| a[] | Kozo Inada | [Staalplaat] | 詳細 |
| b[] | 0* + Kozo Inada | [V2_Archief] | 詳細 |
| c[] | Kozo Inada | [SELEKTION] | 詳細 |
| d[] | Kozo Inada | [Staalplaat] | 詳細 |
| e[] | Kozo Inada | [Digital Narcis] | 詳細 |
| f[] | Kozo Inada + Philip Samartiz | [Digital Narcis] | 詳細 |
コンピレーション参加作品
| -[0] | Jujikan | 詳細 |
| -[1] | Tum' mp3 | |
| -[2] | INFLATION / *0 : 0.000 remix | 詳細 |
| -[4] | Open Mind | |
Web site : http://snd.jp.org/
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